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不況とリストラの意味 恐れに縛られずに生きる

 日本の経済と国の財政が、解決しなければならない問題に直面していること自体は疑いがない。

  「経済不況は悪いことか?」 答えは、「風邪が悪いことか」という質問に対する答えと同じだ。西洋医学ではもちろん「風邪=悪」と思っているので、 その症状を薬で抑えようとする。

 (ちなみに風邪薬は風邪を「治す」のではない。鎮痛成分で痛みを感じなくさせ、解熱成分で熱を下げ、咳止め成分で咳を止めるだけ。「治る」のは体が自分の回復力で治る。)

 しかし、非西洋医学系の療法を学んだことのある人なら、「風邪」の症状を経験するのは、体の側の理由があると考える。

 「熱は体を浄化するため」「風邪をはじめ横にならなければならない病気は、忙しく生き過ぎる我々に、足を止めて、落ち着いて考える時間を持たせるため」。

 こういうふうに理解することができれば、風邪をひいた時、ただそれをいやなものと見なして風邪薬で症状を抑えてすまそうとする代わりに、食生活や生活習慣を少し整える機会としたり、忙しすぎる日常から離れて自分や自分の体について振り返る機会にすることができる。

 そうしてこそ風邪の「意味」が生きる。

 病気は、日常生活の中で体のリズムの乱れやエネルギーの滞りを知らせてくれるメッセンジャーだ。風邪のような小さなメッセージに耳を傾けて自分の健康を管理することができれば、それはよりよく健康を維持する知恵を育てることにつながる。

 他方で小さなメッセージを無視し、食事や生活習慣を振り返って改善することをせず、ストレスをかけ続けることをやめないと、次に体から送られてくるメッセージは必然的により大きなものになる。

 小声で話しかけても耳に入らない相手にメッセージを通すには、だんだん大声で叫ぶしかないようなものだ。

 病気は、それまで抱えてきた不要なものを手放す機会とも考えることができる。それが小さな習慣やストレスであれ、それによって溜まった体の中の毒素やエネルギーの停滞であれ、また時に自分の人生に対する態度そのものという大きなものであれ。

 同じ見方で「経済の健康」ということを考えてみることができる。

 「不況」は、それまで我々が当たり前に思ってきたものを見直し、物事の優先順位を意識的に整理し、不要になっていたが、ずるずると手放さずにきたものを手放すようにと促す。

  それは拡大と収縮という、生の営みの自然なリズムだ。

 収縮期とは、拡大期に取り入れたものを吟味し、必要なものを残して自分の中に統合し、不要なもの、用済みになったものを手放して自分を軽くする時期だ。それによって、また次の拡大期に新しいものを取り入れるスペースを作ることができる。

  「リストラ」は、それまで無意識に生きていた人の自らの人生における価値観や優先度を根底からくつがえす。

 「意味を感じられないが、とにかく生活のために/安定を求めて続けてきた仕事」を手放さざるを得なくなることは、人生と「自己」からのメッセージだ。「仕事だけが自分の生きる意味なのか?」という問いに直面する期間が与えられるからだ。

  本当は「自己リストラ」をすることができれば、それにこしたことはない。生き甲斐のない職場に見切りをつけて、本当にやりたいことを探す勇気がもてるなら、もちろんその方がずっといい。

 しかし多くの人にとっては、それまで安定を与えてくれた環境は、たとえ本当の意味で自分を満たしてくれるものでなくとも、手放すことは難しい。

 たとえそれがゆっくり自分の魂を絞め殺していく環境であっても、物質レベルの安定、生活の支えを手放したくはないと大部分の人は思う。あるいはそれ以外に道や選択肢があると考えない。

 だからこそ、そんな時、長く切り離されてきた自分の魂の一部(ユングの言う「影」)が、ドアを蹴破って人生に入ってくる。「自分は誰なのか」という問いを突きつけるために。魂がそのまま枯れ萎んでいくことを阻むために。

 安定が一方的によいものだというのは思いこみであり、物質的な価値観で動く社会からの条件付けだ。安定が自己の成長を阻み、ゆっくり魂を枯れさせる時には、その安定は老化、退化、そして死のゆりかごに過ぎない。

 そのことを人は内面で知っている。だからこそ、危険をおかし冒険をおかして生きる人々にあこがれ、映画を見、小説を読む。

  不況やリストラといった、生活の土台に影響を与え、また揺るがす人生の外的変化は、「あこがれを自分と切り離したままにするな」という人生と自己からのメッセージだ。

 この意味をくみ取ることができるかどうかに、それが単なる苦しみと困難として経験されるのか、それとも生き方を見直す天与のきっかけになるのかが、かかっている。

(2002年12月)

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