08. 住居 エネルギー風水

住居選び

 ここのところ2年に1度の恒例行事の感のある私の引っ越しだが、またその季節がやってきた。

 もっとも今度の行き先予定地であるハワイは、仕事のロジスティクス的に考えれば必然とも言え、以前からガイドからの示唆もありながら私の方で意地を張って拒んでいた先だから、いったん移ってしまえば当面の定住拠点となる可能性が濃厚である。

 (その次に引っ越しをするなら20年くらい先にヨーロッパへ... というのが密かな願いだ。)

 昔から世話になっている占星術師も、実は引っ越し先としてハワイを勧めていた。州のチャートの星やエレメントの配置が、私のチャートと至極相性がいいらしい。

 何年か前に言われた時には考えてもみなかったが、ここらで意地張りの代価として時間とエネルギーのロスを支払うのを止めて、おさまるべき場所に落ち着く時期でもあるようだ。

 やりたいことがあまりにありすぎて1日が48時間あっても足りない私としては、セーヴできる時間とエネルギーはセーヴするべき... と考えられるくらい大人になったとも言えるか(笑)。

 いずれ7〜9月の間は引っ越しが完了しないので、再びトランクを担いでの放浪生活である。

 というわけでアパートを引き払う準備として、引っ越し業者を呼んで見積もりをしてもらったが、担当者は「こんなにきれいでよく整頓された家を見るのはめったにない」と感嘆していた。

 こういうコメントをもらうのは初めてではない。ニューヨークのアパートでも、ケーブル会社の技術者から引っ越し業者まで、「いろいろな家に出入りしているが、今まで見た中でも最高にきれいな部屋」等と言われた。

 私は別に掃除マニアではない。衛生的に暮らすための最低限の掃除はするが、専業主婦のいる家や掃除婦を頼む家庭などに比べれば、掃除や手入れにかける手間は数分の一以下だろう。

 家具の数を最低限に押さえているので、本棚に収まりきれない本が床に積まれ、机の上にも作業中の仕事が並んでいる。

 しかし、私が生活空間の管理について決して妥協しないことが一つある。それは、すべての物を収まるべき場所に収めるというこだわりだ。

 物が空間の中のしかるべき場所にあるべき形で配置される時、安定感と秩序が生み出される。それが住居全体にわたって行われれば、見た目に快いだけでなく、その中にいることで心身の落ち着く空間が生まれる。あふれている本を積む時にも、ここの場所にこんな風に積むとしっくり収まるという「間(ま)」とリズムがある。

 これを徹底する時、その居住空間に足を踏み入れた人は、なぜだかわからないが、そこを不思議に心地よい場所として経験する。

 そして大概のアメリカ人はその心地よさの原因を「家の中がきれいなせいだろう」と思う(というのは普通のアメリカ人が「心地よい家」にはなくてはならないと考えているデザイン装飾やソファ等ゆったり系家具は皆無の、禅寺のごとき住居なので)。

 エネルギーに敏感なヒーラーの友人の一人は、以前アパートに訪れてきた時、あたりを見回して一言つぶやいた「ここには秩序があるね」。

 空間の秩序の追求は、私のこだわりでもあり、生活必需条件でもある。

 新しい住居に引っ越した時にまずやるのは、空間を浄化した後、部屋の機能を決定し、その後で物を置く場所を決める。部屋の機能はその住居と部屋本来のエネルギーと一致しなければならない。

 その後で部屋ごとにまず主要な要素を配置してみて、完全にすべての要素がしっくりとバランスよく収まるまで、動かしては確かめることを満足するまで徹底的に繰り返す。これを怠ると必ず後から配置のやり直しになる。

 そしてさらに部屋と部屋、住居全体のバランスもチェックし全体的な整合性に配慮を払う。

 その住居と部屋本来のエネルギーというのはどういうことかと言うと、家や部屋にも「チャクラ」(ないしはチャクラに対応するような機能)があるということだ。

 それは家の作りや立地条件ごとに異なるので、残念ながらごく大まかなルール以外にはマニュアル的に説明することはできない。つまり風水のように座山ごとに一括して方位によって機能を決めてしまうとか、おきまりの「調整用アイテム」を使うというようなことができない。

 伝統的な風水(あくまで伝統的な風水、アメリカや日本で今もっぱら流行っているファッション風水ではない)はパワフルな技術であり、それはそれで活用されるべきと思うが、それ以外にも家のエネルギー構造があるというのが私の経験だ。

 例えば前に住んでいたウッドストック山中の家は、山の斜面に建てられていて地階が半分土の中に埋まった構造になっていたのだが、この階の部屋の1つはドリーム・インキュベーションに理想的なエネルギーをもっていた。

 一歩足を踏み入れると、大地につつまれて深く内側に意識を向け、同時に無意識への通路を開くことを促すしっとりとした力が感じられる。他方、玄関がそのままリヴィングに開く1階はこの家の第3+第4チャクラで、外部世界との関わりと自我の機能を担当していた。そしてそこから階段で上がる2階のロフトは、6、7チャクラ系の高く創造的なエネルギーが満ちていて、創造的作業に実に適していた(逆に3チャクラ的思考作業や事務的仕事には適していなかったので、それらはリヴィングに降りてしなければならなかった)。

 しかしこの家と同じ設計で家を建てれば、すべての家がそのような機能を持つかと言えばそうではないので、山の斜面上部にあって、下の谷から吹き上げてくる豊かな自然のエネルギーを受けるという立地が家の構造とあいまって、上記のような機能を可能にしていたのだ。

 今(2000年時)住んでいるフロリダのアパートは、1階はガレージで居住空間は2階と3階(玄関はそのまま2階への階段につながる)という縦に広がる空間で、オフィス、キッチンとリヴィングのある2階がすべての仕事や生活機能という外部世界との関係のもたれる場である。

 そして寝室とバスのみからなる3階は、それらのすべてから離れて完全にプライヴェートな空間で心身を休める場になっている。この3階に上がってドアを閉めてしまうと、「俗世界」との関係はそこで抜け落ちて、大きな窓の外に広がる湿地草原を前に、私はまったく一人、あるいは自然との二人切りになる。

 これは私がそうしたかったというよりも、アパートの立地とエネルギー構造がそのようになっていて、望んでも他に機能の配分のしようがないのである。

 さて、これを読んでいる大部分の人にとっての問題は、だいたいこんな配分をするような生活空間の広がり自体がない、またはこのようなことに興味を示さない家族と同居しているということだろう。

 日本のとくに都会のアパートの家賃の高さと非人間的な狭さは、アメリカ慣れした私にはほとんどショッキングだ。(ちょっと比較に調べてみたが、私のフロリダのアパートは、東京の渋谷で1K・15m2サイズのアパートを借りるのと同じくらいの家賃である。驚いてください。)

 しかし自分の空間が1部屋しかない場合でも、そこに秩序をもたらすことはできる。この場合、不必要なものをまず整理することが最優先の課題になる(ただし空間がたっぷりある場合でも物を持ちすぎたり過去からのお荷物をため込んでいるのは不健康。持ち物整理の詳細は先のメールレターに書いた)。

 そして家族と同居している場合、家の中の1室にでも充分な秩序をもたらすことができれば、それは家の中の他の空間に影響を与え始める。この意味でも、家族と同居する家の中が雑然としている、あるいは家の中のすべての空間に自分のコントロールが及ばないからといってあきらめる必要はない。

 他方、自分の身の回りに秩序をもたらす努力をしてみる過程で、家の中の混乱したエネルギーがあまりに強く自分に影響を与え、それに抗することが難しいと実感したなら、その枠組みを出て自分の空間を確立するのを考えることもできなければいけない。

 家族と一緒に住むことが自分の自己の確立を妨げているという認識がありながら外に出て自分の空間を確立できない人は、自分と家族との間の共依存関係についてよくよく考えてみるべきである。

 そして人によっては家だけでなく、真の自己を確立するためには、生まれた土地や国をいったん出なければならないこともあるのだ。

(2000年)

(引っ越しと住居論の続き)

 先号の住居論にはいろいろ感想をもらった。多くの人にとって関心のある分野のようなので、続きを少し書く。

 ホノルルで新居を探すのに、賃貸探し専門の不動産屋を雇って30件ほどの物件を見て回った。

 業者の目には「完璧に条件の揃った物件」を、私がちょっと室内をチェックしただけでいともたやすく「だめ」と首を振り、アメリカでは誰もがこだわる備え付けの電化製品、カーペットや壁のペンキの新しさなどを無視し、コンパス片手に家の方々に立っては風の流れや採光(実際にはエネルギーの流れと質)をチェックする私を、不動産屋は「ただ者ではない」と見たらしい。

 「違う」というのに「隠れ風水師」か何かと決めて(だいたい手にしていたのも風水の羅盤などではなくダイヴィング用のコンパスだ)、最近になり「謝礼を払うのでコンサルタントとして相談に乗ってくれないか」と頼まれて困っている(笑)。

 さて、前のフロリダの3階建てアパートは、異なるエネルギーが垂直方向にまたがる構造になっていたが、新しいアパート(「賃貸マンション」)は1LKの水平構造だ。

 このアパートが私を引きつけたのは、リヴィング真正面の壁が、ホノルル湾を右手に見る形で一面ガラス張りになっており、37階建てという高さとあいまって、部屋がそのまま外の空間につながるようなオープンで透明なスペースだった。

 さらに家のチャクラ機能配分が、入ってすぐ右手のキッチンとカウンターの周囲に1、2が集まり、カウンターに近いリヴィングの辺りが3、リヴィングの真ん中辺りが4、そして奥のガラス壁に向かって5、6、7と高くなっていき、7はそのまま外の空間に開く配列になっている。

 ユニットの一番奥、位置的には平行してリヴィングの隣にあって、同じように南東の壁一面がガラス張りになっている寝室は文句なく6、7+である。わかりやすく言うと、入り口から奥に向かって順に1〜7が素直につらなる形になる。

 ダイニングエリアもなく、大きなリヴィングが広がっているだけのシンプルなオープンスペースであるため、機能の配置も容易だ。定めた機能に対応する位置に、その機能を象徴する要素を配置していけばよい。

 第1チャクラとキッチンは単純にイコールではないが、このユニットではこれが成り立っている。建物の場合は第1と第2チャクラは機能的にもあまりはっきり分かれず、近くに、または重なるように位置していることが多い。

 したがって、この空間では、第1チャクラの「大地の恵みを取り入れ、体を元気で健康に保つ機能」と、第2チャクラの「自己感情と免疫能力の充実、取り入れた滋養の吸収機能」を意識して、それが生かされるように努める。肉体を支える食事の準備を、楽しみながら、自然の恵みと自分の体に感謝しながら行う、といったことだ。

 キッチンとリヴィングは壁ではなくカウンターで仕切られている。このカウンター沿いのリヴィングの一角は第3チャクラ系の知的作業に適したエネルギーがあるので、ここを「オフィス」と定め、オフィス机を中心にファクス、プリンタやファイルなど「仕事道具」を配置する。

 第4チャクラに対応するリヴィングの真ん中は、フリーのオープンスペースだ。人によってはここに応接セットなど置きたいと感じることもあると思うが、私はとにかく開けた空間が好きで、ウエイトトレーニングなどをするのに床の上で動けるスペースも欲しいので、こういうことになる。

 お客さんがあったりすれば、リヴィングのラナイ(ヴェランダ)でお茶を飲んでもらうことになる。日本の感覚からはちょっと変かもしれないが、ハワイや南カリフォルニアのような気候の土地ではラナイも居住空間の一部である。

 リヴィングのガラス壁寄りのエリアには本棚や書き物机など、第5チャクラ(自己表現、判断力、実現能力)、第6チャクラ(ヴィジョン、知恵、インスピレーション)に関係するものが配置される。事務管理系の仕事は第3チャクラ・エリアで、創造性を必要とする書き物などは第5・第6エリアでする。

 たとえば計画を立てる場合には、まず第5・第6エリアで展望を見通し、流れをつかんで、プランの内容やタイミングの適切さを確かめたら、そのための具体的な手配作業、確認作業、数字やデータの扱いなどは第3エリアでする。

 あるいは文章を書き上げるのは第6エリアで、その推敲をするのは第3エリアで、という感じで、作業内容に応じてノートパソコンをもって移動する。

 さて、このアパートはたまたま上記のように間取りのシンプルさと幸運から、チャクラが順に整列する格好になっている(そのために機能性がよい)のであるが、すべてのアパートや家でそのようになっているとは限らないところが、ややこしい。

 同じ建物の中で2LKのユニットも見せてもらったが、同じようにリヴィングの壁がガラス張りになっているものの、内部の空間にすっきりとした広がりが感じられない。

 2つ目の寝室が、ユニット全体を見渡して、自然な空間配置なら第3または第4チャクラが来るのが望ましい位置に来ている。寝室は本来第6・第7チャクラに対応し、また静かに休めることが望ましい。この寝室の位置では、眠ってもたぶんあまり疲れがとれないだろう。

 ユニット自体のエネルギー配置を生かすなら、この2つ目の寝室は第4チャクラのリヴィングないし応接室、あるいは第3チャクラの事務仕事部屋として使わなければならない。が、いずれにしろ、ユニットの中全体をエネルギーがきれいに流れず、滞る感じがある。

 こんなふうに、家にとって自然な位置にキッチンやリヴィング、寝室などが配置されないことはままあって、思い切って使い方を工夫することでカバーできることもあれば、壁を壊して全面的に改築でもしなければどうもならないと感じるものもある。

 では、自分の住居でこれらの要素を知るにはどうしたらいいのか? 簡単な方法は、家や部屋のいろいろな場所で、特定のチャクラに対応する作業や行為をしてみることだ。

 たとえば家計簿を付ける、込み入った文章を読む、問題を解くといった左脳系の知能作業を、異なる場所でやってみる。それが一番楽に、スムーズに、間違いが少なくできるのはどこか? そこがおそらく第3チャクラの機能に対応する場所だ。

 将来の夢を思い描いたり、計画を立てたりすることが流れるようにスムーズで、ほとんどインスピレーションを受けるように行えるのはどこだろう? そこがおそらく第6チャクラのある場所だ。

 同じ場所に一晩寝てみて、鮮やかな夢をよく見られる、メディテーションがしやすい、あるいは左脳の機能を必要とする仕事をしようとしても、気が散って(空想にはしりがちで)進まないなどが確認できれば、確実だ。

 逆に第3チャクラのエネルギーのある場所で創造的な作業をしようとすると、行き詰まるような感じがして、のびのびとした発想が出ないといったことが経験されるはずだ。

 しばらく住んで慣れた空間では、これらの感覚がわかりにくいことも多いので、話の通じる友人(できれば複数、一人ずつ)にチェックしてもらい、そのデータを総合してみるのもよい。

 大切なのは、一つの家や部屋の空間にもさまざまな機能が備わっていることに気づき、感覚を開いて、自分にとって居心地のよい場所、落ち着く場所、体の休まる場所、頭のさえる場所などを、感覚と経験を通して探してみることだ。

 すべてのチャクラを探そうとやっきになったりせず、まずはわかりやすいポイントを見つけ、それを実際に使ってみればよい。

 そして他の建物や家に入る機会があれば、同じように感覚を澄ませて、観察する経験を積む。

(ただし、頼まれもしないのに他人の居住空間について、あれやこれや余計なコメントをするのはマナー違反なので慎むこと。)

(2001年)

|