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June 25, 2005

秋...?(ホノルル)

 ホノルルの自宅(アパート)はチャイナタウンの向かいだ。

 フロリダに比べれば、どんなところに移ろうとそれ以上食糧事情が悪くなるわけはないのだが、ホノルルのチャイナタウンは「オアフの台所」と言われている。

 本土から来たアメリカ人は「ハワイは食費が高くつく」と口々に言うが、チャイナタウンに食料の調達に出かける限り、そんなことは感じない。

 朝の7時前にはもう大にぎわいの市場通りを歩いていけば、色とりどりの新鮮な食材が、本土のスーパーなどよりずっと安く手に入る。

 これまではいつも、日本を訪れるたびにちょっとうらやむことがあった。それは、アメリカでは望むべくもなく豊富で新鮮な旬の野菜や果物が並ぶスーパーの野菜売場だ。

 しかしここに到ってそのうらやみは解消された。

 まあ日本の四季の風情ある野菜とはちょっと違うのだが、代わりにニガウリ、ハヤトウリ、パパイヤ、マンゴー、まだ正体をつかみきっていない南方系の野菜や果物、食用花、それにニンニクの花芽やリュウガン、ライチといった変わりものも含め、華僑御用達の野菜や果物が豊富で、とにかく安い。

 自炊に飽きたら、これもチャイナタウンの周辺に林立するアジア系の店へ。中華だけではなくタイ、ヴェトナム、韓国、フィリピン系など、にぎやかだ。

 例によって(日系のお店ではそんなことできないが)、中華のお店では食べたいものがメニューになければ「これとこれを入れてこんな感じで」と頼めば好みの料理を作ってくれるし、韓国系のお店ではやっぱりビビンバを肉抜きで作らせてしまう(笑)。

 フードコートのテーブルで、肉抜き海草入りのビビンバを食べていると、顔見知りになった屋台のおじいちゃんが「飲みなさい」とコーヒーを勧めてくれる。

 こんな風にアジア文化圏の肌触りの中に浸っていると、ふと自分がどこにいるのかわからなくなる。ここが台北の市場の屋台街であっても、ソウルの食堂の片隅であってもおかしくない、そんな感じがする。

 一年中大して気候の変化のないハワイ、八百屋の店先にはずっと熱帯、亜熱帯系の野菜が並ぶのだろうなと思っていたら、新鮮そうな銀杏を発見。日本のよりかなり大粒のやつが、網袋に入って並んでいる。2キロの袋を5ドルで買い求めてご機嫌。

 それから隣の店に足を運ぶと、お... 栗? 特大サイズの大きくずっしり重いやつらが箱盛りになっている。黒光りして新鮮そうな初物... と思って、そこで初めて今が9月の中旬過ぎであることを思い出した。

 栗が出回るのを見てようやく今が秋であることを思い出す... ハワイで浦島太郎状態。

 時差による体力の負担を軽くし、日本への旅行を容易にしようと考えハワイに引っ越したが、逆にアメリカ本土への移動は長距離になるので、割が合っているのかどうかよくわからない。

 だが、住んでみれば、当初心配した「やたら浮いたリゾートの雰囲気」はワイキキ周辺(それに観光客の集まる高級ショッピングセンター)に限られていることがわかった。

 そしてワイキキ自体、観光を最大の資源とするハワイ州が、したたかな経済戦略に基づき作り上げた「人工的な観光リゾート地区」であって、オアフの本当の顔は別のところにあるのが見えてくると、島での生活がおもしろくなってくる。

 窓の外に広がるダウンタウンのビル街、そしてその向こうに青く光る海は、ここが大海原の真ん中にぽつりと浮かぶ文明圏だということをつねに思い出させる。

 ホノルルは世界でもっとも孤立した都市と言われる。距離的に、ヨーロッパはもちろん、アメリカ、アジア、他のどんな都市から訪れるにも遠いのだ。

 だが等分に遠いということは、その真ん中に位置するということでもある。

 アジアとアメリカの間に位置し、幾つもの顔を使い分けて、独立、繁栄と独自の文化圏を保つ「国」。

 楽園の恵まれた自然環境の上に、日系移民の勤勉さと華僑の経済能力が手を取り作り上げた経済とインフラストラクチャー。そしてそれをポリネシア系のおおらかな「アロハ・スマイル」で包んで、外にはシンプルな楽園としての顔を向ける。

 オアフの懐は思いのほか深いなと思う。

(2002年9月記)

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