精神性分野での執筆活動について(感慨)
(2003年まで発行していたニュースレターを、メールマガジンに移行させるに際しての思い出と感慨)
1994年頃、知人の紹介で『パワースペース』という今はなき名雑誌から執筆依頼を受けた。最初に書いた記事がよかったようで、それから定期の執筆依頼を受けるようになった。
雑誌への執筆は、テーマや字数の制約があったものの、毎回、取材やリサーチに時間をつぎ込むことができて、それなりに楽しく充実していた。
この期間に書いた記事の中で一番の傑作は、ダニオン・ブリンクリーとのインタビューかなと思う。
ちなみに日本で雑誌としてバックのフラワーエッセンス(バッチ・レメディ)についての記事を掲載したのも、ここが初めてだったと思う。
最初の執筆者、日本ダウザー協会会長の堤裕二さんは「バッハの花療法」と呼んでいた。(Bachはドイツ読みでは「バッハ」。英語では「バック」と発音される。日本で普及している「バッチ」という読み方は謎)
他方で同じ頃、一切の制約なしに自由に自分の考えを発表する場が欲しいと思い、1995年、『TERRA STELLA』を創刊した。部数は大して多くはなかったものの、なんだかんだといって一定数の購読者をもって7年にわたり続けてくることができた。
友達からコピーを分けてもらっての「コピー購読」の人も結構いたようなので、読者の数はこちらで把握していたより多かったかもしれない。
精神世界の中では硬派と言えた『パワースペース』が各方面から惜しまれつつ休刊となった後も、連載ものも含め、複数の精神世界系雑誌に記事を執筆する機会があった。
中には書いているうちに雑誌とのそりが合わなくなり(最初は比較的見識をもった雑誌だと思ったのだが、そのうち怪しいニューエイジ・ビジネスや新興宗教っぽい広告がたくさん載るようになり、それに合わせて編集の方向も変化していったようで)、どうにも記事が書きにくくなって、ずるずると原稿の質が落ちていったこともある。案の定しばらくして連載打ち切りになり、正直ほっとした。
雑誌の記事とは書き手が一方的に書けるものではない。雑誌の編集姿勢、そして編集者との関係という器の中でこそ、記事は生まれる。
そうこうするうちに、ここ2年ほどは教える仕事の方が忙しく、雑誌原稿の依頼を何度か断るうちに、やがて依頼がこなくなった(笑)。
同時に『TERRA STELLA』の内容がここのところ、やや閉鎖的になってきていることが、日増しに気になっていた。私的なニュースレターという性質上、読者の大半が私の活動に興味をもってくれていることが明らかなため、それに甘えてしまうことが増えてきたこともあるだろう。
私的な発行物なのだし、新しい購読者もぽつぽつ増えているのだから、別にそれでもいいと開き直ればそれまでだが、このところ、自分の中の「よい読み物を書き上げたい」という創造的欲求が強くなってきた。
そしてそのためには、そのための新しい器が必要なのが明らかだった。
雑誌という器(うつわ)があってこそ、その関係性の中から雑誌記事が生まれる。個人発行のニュースレターのように、雑誌とその編集者という存在が介在しない場合、器は書き手と読者の直接的関係によって形成される。
読者が個人的な支持者に限られてしまうと、執筆内容は必然的に閉鎖的、マニア的になる。これに対して幅広い読者層は、書き手に、一般性があり、わかりやすく、内容に付加価値(実用性、読む楽しみなど)のある記事を要求する。
雑誌原稿の制約を受けずに、このような読者層を得るための媒体を模索していて、メールマガジンという形式に行き当たった。
メールマガジンの中にはもちろん、単なる個人のぼやき的内容や宣伝チラシ的なものもある。だが内容が本当につまらなければ、一定数を超えて読者は集まらない。
この意味で、「定期的に原稿を仕上げて発行する」「レベルを落とさず読み応えのある記事を書く」といういい意味での圧力を与えてくれる。
さらに、このような圧力を自分に課して定期的に記事を書き下ろしていくことで、いずれ本にまとめるための原稿をためていこうという目論見もある(笑)。
これらを理由に、また新しく生まれ変わらせるために古いものを手放すという意図のもとに、これまでの慣れた形式であるペーパー版を手放して、オンラインのメールマガジンへと移行することにした。
「新しい葡萄酒は新しい革袋にもれ」というのは聖書の言葉だが、この言葉に込められた知恵は古びることがないと、これまでにも幾度思ったことか。
(2003年1月記)
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