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June 24, 2005

イルカと泳ぐ&ダイビング(ビミニ島)

dolphins1ビミニ島のマダライルカ おうゆい (C) 2001

 ためていた休日をバハマのビミニ島で過ごす。

 「趣味と仕事の境目が限りなくあいまい」と以前書いた。実際、家にいる時は深夜まで机に向かっていることも珍しくなく、土日も関係なく仕事をしているので、まとめてとる休みは強制休養。

 もう一つ、ダイビングは私にとって唯一、仕事と関係のない趣味らしい趣味なのだが、このところ日本に出かけるたびに持ち帰ってはやたら長引く気管支炎の治療に効果があるのを発見している。

 日本から帰った後にダイビングの日程をはさむことを試みているが、具合がいい。海につかりながらレギュレータを使ってのリズミカルな深呼吸が、肺の掃除に効果的なようだ。

 カリブ海周辺はハワイ同様、いかにもリゾート地という感じがして敬遠していたが、イルカに会える水域を探していくと、どうしても行き着くことになる。

 もっともビミニ島は一応バハマ国内だが、地理的にはどう見てもフロリダの一部で、北ビミニまではマイアミから飛行機で20分かからない。私の住む北フロリダのセントオーガスティンからなら、東京から九州に出かけるほどの感覚だ。

 北ビミニへの飛行機は小型の水上発着機で、なぜ水上発着かというと、島には空港も滑走路もないから。小さな飛行機は淡いターコイズブルーの水に滑り込み、そのままごとごとと浅瀬を走り、航空会社(外見はどう見ても普通の民家)の庭をアスファルトで固めた駐機場に乗り上げる。そばに立っている小屋が入管兼税関の検問所だ。

 形式ばかりの検問を済ませ、そのまま歩いてダイブショップへ。とにかく小さな島で、その気になれば端から端まで歩いて回れる。

 実際、島での主要な交通手段は、徒歩以外にはゴルフ・カート。海沿いの道路をとろとろとカートが走り回る光景には(どれくらいとろとろかというと、駆けていく子供たちに追い抜かれる)、いやがおうでも心が和む。

 意外なことに、ビミニはリゾート地の浮いた雰囲気はなく、もっぱら大物狙いの釣り好きが集まる漁村という感じで、居心地はきわめてよかった。ヘミングウェイがいたく気に入って晩年ここに住んだというのも納得できる。

 初日の午後はさっそくイルカ探しに。常夏の島ながら1月末から2月は一応「冬」のオフシーズンということで、船にはスタッフ以外に客は8人のみ。

 船での移動中、ビミニ沖のイルカの生態や、コンタクトのルールなどについてのブリーフィングを受ける。港からイルカの「なわばり」水域まで1時間弱、その後2時間ほどクルージングしてまわったが、この日はイルカの姿は見られず。

 イルカ探しに船が出るのは週に3回だけなので、翌日は朝から潜る。

 しかしいくらオフシーズンとはいえ、船に乗っているのはキャプテンとダイブマスター以外には私と連れの友人のみ。まだライセンス取得途中の友人はシュノーケリングしかさせてもらえず、潜るのは私とダイブマスターの2人だけ。

 潮流の強い沈船ポイントをスムーズに潜りこなし、エア持ちもよいことを納得してもらえた2日目以降は、かなり自由に行動させてもらった。まったく人気のない海を自分のペースで探索して回れるのは、大量のダイバーで込み合う中をガイドの後を追いかけなければならないハワイの沿岸ダイブとは雲泥の差だ。

 当初、ビミニはイルカと泳ぐこと以外に大きな期待はしていなかったのだが、明るいターコイズブルーの海のずば抜けた透明度と、魚の種類と数の多さはすばらしかった。

 熱帯性のきれいな魚と、ロウニンアジなどの大きな回遊魚がいっしょに見られる。ついでに初日から大きなエイは出る、カメは出る、体径が大人の太股ほどの巨大なウツボはいる、大きなバラクーダ(オニカマス)も群れている、続いてサメまで出してもらう。

 そして2日目に港へ帰る途中の遭遇。

 船を操るオーナがなにやら興奮して叫んでいる「ジンベイザメの子供だ!」あわててシュノーケルをくわえ、船がエンジンを切るのを待って水に飛び込む。子供とはいっても体長6メートルはあった。

 水深20メートルほどの真っ白な砂の海底を背景に、きれいなまだら模様の若いジンベイザメが泳いでる姿は、夢のように美しかった。

 ビミニでジンベイザメとは期待していなかっただけに、いっそう忘れがたい思い出になった。

 広い海では、生き物との出会いはすべて運。人間の側でいくら見たいと思っても、海の方でそう選ぶのでない限り、お目通りはかなわない。

 以前、メキシコのラパスで出会ったオーストリア人のビジネスマンは、ひたすらマンタが見たくて中南米から中近東まで様々な場所で100本以上潜っているのに、まだ1度も見たことがないと嘆いていた。

 ラパス沖の海はマンタがよく見られることで知られている。しかし彼が船に乗っていた3日間、マンタたちは姿を隠してしまい、「いつもここにいるのになあ」と、おきまりのポイントでも姿が見られないことにダイブマスターも首をかしげていた。

 最後のダイブを終え、船の上で昼食をとりながらビジネスマン氏は「今回もだめだった。次はヤップにでもいくしかない」とあきらめきっていた。昼食を終えた彼は、腹ごなしのシュノーケリングに水に飛び込んだ。

 と、なんと100本あまりのダイヴィングを通して一度も彼に姿を見せなかったマンタが、それも5メートルはありそうな大きなやつが、挨拶をするようにゆうゆうと彼の真下を泳いでいった。

 オーストリア人は日本人と同様、感情表現が控えめなので、アメリカ人ならしただろう大騒ぎはしなかった。しかし水から上がった彼の顔は、喜びでゆるみまくっていた。

 さて、3日目は2度目のイルカ探し。

 イルカのなわばり水域に入って1時間半ほど過ぎた頃、5匹のマダライルカたちが現れ、船と一緒に泳ぎ出す。船の作り出す波に乗って、ご機嫌な様子だ。

 しばらく船上から観察した後、水に入る。イルカたちは待ってましたというようにまわりを泳ぎ回り、いかにもこちらに見せるためのちょっと格好をつけた泳ぎっぷりを見せてくれる。イルカたちのソナーのエコーが水に響いて体を貫き、なんとも心地いい。

 少し離れたところで楽しそうに泳いでいる若い2匹にカメラを向けると、「わ〜い」とせりふでもつけたくなるような様子でいっさんに私(あるいはカメラ)めがけて寄ってきて、イルカ・スマイルを捕らえることができた。5頭のイルカたちと存分に遊ぶことができて満足。

 3回目、最後のイルカ探し。マダライルカの群や親子連れ、ハンドウイルカのカップルなどが寄ってきては船の舳先の波に乗って遊ぶのだが、人間が水に入るととたんに離れていってしまう。

 水から上がるとまた近寄ってきて、人間が水に入るとまた向こうへ行ってしまうということを3回繰り返し、この時点で今日は気分が乗らないらしいと判断。イルカたちの意志を尊重し、船の上から見るだけに決める。

 と、とたんに何頭もが船にぴったりついて水面すれすれに踊るように泳ぎ出し、時々ジャンプするなどしながら、夕暮れまでかなり長い間、目を楽しませてくれた。「今日は水には入らず見てちょうだい」の日だったらしい。

 ビミニの海は、大好きな海だ。ターコイズブルーの海を見ているだけでも、わくわくする。「またあの海に潜りに行く時間を作るために」と考えるだけで、仕事をはかどらせる気力が沸く。

 イルカたちと泳げるという点を除いたとしても、豊かでダイナミックな海とそれをとりまく環境そのものが、自分の体とエネルギーしっくりくる。ビミニの海と自分の間には他では感じないエネルギーのリソナンスがあるようにさえ思う。

 そんなことを考えながら、たまたまテレビのDiscoveryチャンネル(ケーブルの科学専門チャンネル)をつけたら、お世話になったダイヴショップのオーナーが映っていた。『まだ解き明かされない世界の謎』という番組で、ビミニ沖の海底にある、明らかに人工の石畳のように見える構造物が海底に沈んだアトランティスの遺跡の一部か...という話で、その海底ガイド役を務めていた。

 次はあそこに潜らせてくれるよう、ねだるぞ。

(2001年1月記)

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