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June 25, 2005

ボストン美術館の秘密

 ナムカイ・ノルブ・リンポチェの伝授会に出るため、久々に訪れたボストン。

 カフェに座ってお茶を飲むなんていうのは、2年前にニューヨークを出て以来だ。紅茶を頼めば、キーマムの茶葉を熱々のお湯で陶器のポットで入れて出されたりするのが、お茶好きの私にはことにうれしい。

 アメリカで紅茶と言えば普通、沸ききらないお湯を入れたカップにリプトンのティーバッグを添えて出される。

 もっともお茶やスープが舌をやけどするほど熱いのは、ニューイングランドの気候とも関係あるだろう。5月だというのに凍えるほど寒く、人々はダウンジャケットやロングコートで歩き回っている。

 着いて二日目の夜には雪がちらついた。こんな気候では、体を芯から暖めてくれる飲み物が生活の必需品だ。

 オフの時間を使って美術館に出かける。

 ボストン美術館と言えば世界的に有名で、日本でも時々ここの所蔵品を借りて展覧会が開かれるので、名前を憶えている人も多いだろう。

 が、ここので私のお気に入りは絵画ではなく、考古学系の所蔵品(とくにエジプトとシュメール文明のもの)。

 エネルギーについて勉強している人で、ボストン美術館を訪れる機会があったら試してほしい。

 エジプト関連の展示は1階と2階に分かれていて、2階がメインの展示だが、展示エリアに入ってすぐの右手に小さな小部屋がある。ほとんどの人はこの部屋に気づかず(またはある理由で)通り過ぎる。

 1歩足を踏み入れてみればわかるが、この部屋の中は一種の「別次元空間」になっている。4000年前に建てられたマアト女神の礼拝堂の壁をそのままエジプトからもってきて、もとの礼拝堂の形を再現するよう小部屋の四方の壁にはってあるのだが、何をどうしたものか、実際に内部がエジプトの礼拝堂の空間になっているのだ。

 密度の高くしっとりとして静謐なエネルギーは、10分もその中にひたっていると、体も心も別の世界にもっていかれる感があり、もう外に出たくなくなる。

 しかし普通のアメリカ人はこの空間を「異質なもの」と感じ、心地悪く思うらしい。私が部屋の中で静かな黙想状態に入っていた30分ほどの間、何十人もの人が展示エリアに入ってきたが、大部分はこの部屋を素通りしていった。

 アメリカ人は珍しいものは何でも見たがり頭をつっこみたがるが、奇妙なことにこの部屋だけは素通りしていく。時々部屋の存在に気づいた人が足を踏み入れかけるが、1、2歩入ったただけで変な顔をして引き返していってしまうのは、本当におかしいほどだ。

 この部屋の中でしばらく時間を過ごしてから外に足を踏み出すと、その空間の質の落差にははっきりとしたショックを憶える。

 ちなみに展示エリアの左手にも同じように再現された別の礼拝堂があるのだが、こちらは「はずれ」で、ただの「展示物」である。

 アメリカ有数の都心の中に、数メートル四方の古代エジプトの神聖な空間が存在している、というのはなかなか幻想的だ。

(2002年5月記)

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