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July 25, 2005

師匠の家は動物園

 私のヒーリングの師は南カリフォルニア在住だ。ご主人はロスで青少年向けの空手スタジオを開いていた人。そのご主人からウェイトトレーニングのレッスンを受けるため、師匠のところにしばらく滞在した。

 私の動物好きは並ではないが、師匠のそれも並ではない。

 到着した最初の晩、師匠宅に足を踏み入れると、淡褐色のグレーハウンドが迎えに出た。半年ほど前に、グレーハウンド・レスキュー(ドッグレースからグレーハウンドを助け出すグループ)から引き取られてきたという犬だ。

 しゃがんで挨拶をすると、ぺろりと鼻をなめられた。「あらまあ」と師匠が驚く。この子は普段、人の顔をなめることをしない犬なのだそうだ。

 さらに二匹のアビシニアン猫たちが足下にすり寄ってくる。

 師匠はリヴィングで小さなオウムをかごから出すところだった。

 「4週間前にね、野生のオウムの巣から落ちたのを拾ってきたのよ」

 もとの巣を探して戻すことができなかったので、そのまま引き取って育てているという。ちびオウムを台所につれて行き、餌を食べさせ始める。

 もう一羽、昔からいる大きなオウムが、居間の向こうからこちらを見ている。

 「蛇は元気ですか。パイソンだったかな」

 「パイソンは少し前に死んだわ。今いるのはコーンスネーク(ナミヘビ)ね」

 アビシニアンはエジプト系の猫だが、一昨年まで、バセンジというエジプト系の犬もいた。師匠の趣味はエジプトとヒョウ柄だ(いや、エジプト学の研究者でもあるから、趣味などといってはいけないのだが)。

 このグレーハウンドも、首にヒョウ柄のネックバンドをしている。

 私はこの7年がた、グレーハウンドのレスキュー・グループを支援してきた。将来の夢も、救出されたグレーハウンドを何匹か(できれば1ダースくらい)引き取って飼うことだが、実物のグレーハウンドを見るのは実は初めて。見たこともない犬種になぜここまで入れ込んでいるのか、ずっとわからなかった。

 ヒョウ柄のクッションに寝そべるグレーハウンド。ぴんと耳を立てたその細表の顔... そのシルエットは、エジプトの犬頭の神アヌビスにそっくりだ。ついでに目のまわりにはエジプト風の黒い隈取りまで入っている。

 「そうよ、アヌビスはグレーハウンドよ。グレーハウンドの姿はエジプトやローマの壁画にも残ってるわ」

 アヌビスはエジプトの神々の中でも私がとくに好きな神様だ。小学校の頃に百科事典の写真を見て、しきりにアヌビスの姿を模写していたのを覚えている。グレーハウンドへの愛着はこんなところにつながりがあったか。

 夕食の後、師匠とグレーハウンドと散歩に出た。

 耳の内側に刻まれた入れ墨によれば、この子は3歳。それそろレースの盛りを過ぎ、レスキュー・グループに助けられていなければ、殺されていたところだった(「グレーハウンドを救え」)。

 だが、今、彼女は優しい保護者のもとにある。そしてその余生をゆったりと幸せに過ごせるだろう。

 夕暮れの学校の広いグラウンド。日暮れの光の中を風のように駆けるグレーハウンドの姿は、美しかった。

 翌日、まっ白なグレーハウンドが連れられてやってきた。後ろ足にはギプスが巻かれている。レース中に足を骨折し、そこをレスキューグループに引き取られてきた犬だ。骨折をしたグレーハウンドは、ただちに処分の対象になる。

 この子の里親がしばらく留守にするため、師匠宅で子守りを引き受けたのだという。

 とても人なつこい性格で、一生懸命こちらの顔をのぞき込み、ぴったり体を寄り添わせて甘えてくる。本当に過酷な生を歩んできた犬なのに、どうしてこんなに人を信頼し、こんなに愛情深いのだろうと切なくなる。

 その夜は師匠と私で、ハンズオン・ヒーリングをした。起きかかっている炎症を抑えるためにリンパ系を浄化し、骨折の治りを早くするため、骨にもたっぷりエネルギーを入れる。

 適切なハンズオン・ヒーリングは、骨折のような怪我の治癒時間を最大、半分にまで縮めることができる。

 (そう、私がウェイトトレーニングのレッスンを受けているのは、健康管理という以上に、ヒーラーとしての腕を上げるためである。)

 翌朝には白いグレーハウンドは驚くほど元気を取り戻し、熱も下がって、ギプスをものともせずに家や庭を歩き(時に走り)回るようになっていた。

 その日の午後、トレーニングを終え、カルマヨガとしての庭仕事を終えて、2匹のグレーハウンドと庭に座っていると、師匠が出てきて植物に水をやり始めた。パティオののきからは、たくさんの観葉植物がバスケットに入ってつり下げられている。

 その中の一つ、シダ系の葉っぱが植わっているバスケットに、朝からキジバトが座っていた。キジバト独特ののんびり、まったりした様子で、黒く大きくつぶらな目をくりくりさせてバスケットに納まっている。近づいても逃げる気配もない。

 と、水の出るホースを手にした師匠がそのバスケットの下に立ち、じっと見上げている。

 師匠、それは鳥です。

 しかし師匠、何を思ったか、おもむろにホースをバスケットに向けた。

 鳥はゆっくり立ち上がると、ちょうど小鳥が水浴びをするように羽を広げてぱしゃぱしゃと水を受け、それからまた何事もなかったかのようにちょんと座り込んだ。

 「あっはっはー 鳥に水をやっちゃったよ!」

 師匠の笑い声が響いた。

 翌朝、見ていると、もう一羽のキジバトがやってきて、先にいた鳥と交代してそのバスケットに座った。そうか、卵を産んで温めているのだ。このバスケットを巣にしてしまったのだ。

 そのことを師匠に告げると、やれやれといった顔をした。実はしばらく前に別のキジバト夫婦が他のバスケットを巣にして子育てをしていった後だという。雛がいる間は水をやるわけにいかなかったので、そのバスケットの植物は枯れてしまったらしい。

 「きっとエネルギーレベルで『見捨てられた動物、保護の必要な動物はここに来るべし』なんて看板が立ってるのよね」

 そう言って師匠は笑った。

 
 

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