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January 11, 2020

英語講座『影への求愛』

(以前の有料メルマガで連載)

 個人的な愛読書や推薦書籍の中から、比較的シンプルで読みやすい文章のパラグラフを抜粋し、翻訳例と合わせて生きた形で単語や表現を解説しています。

 無味乾燥な英語の教科書の類でなく、興味をそそる文献を原文で読み込むことは、自分にとって役に立つ形で英語を学ぶ最高の方法です。

 英語は本来非常にシンプルな文法構造を持つ、機能的で学びやすい言語です。平均的頭脳、高校以上の教育と、個人的に切実な動機のある人にとって、自分に興味のある分野の文献、好きな著者の著作ぐらい、英語で読めるようになれないはずがないというのが私の信念です。

 英語の特徴は、文法の単純さと語彙の多さにあるので、具体的目的に向けての学習のこつは、自分が興味のある分野でどれだけ語彙を増やし、鍵となる表現の意味と関連知識をのみ込んでいくかにかかっています。

 そして「好きこそ者の上手なれ」、「継続は力なり」に尽きます。

 少しずつでも興味を引く文献、好きな著者の文章を原文で読んで、単語や表現を覚えていくことは、長期的には必ず大きく実ります。

 オンラインの辞書はWeblioの英和・和英辞典が使いよいです。

 文法があやふやな人は、ごく薄い、簡単な文法書にざっと目を通し直すのもいいでしょう。細々とした文法を覚える必要はなく、むしろ構文の基礎(五文型と句、節に基づく文章構造の読みとり方だけ)をよくのみ込むこと。

 社会人として人生経験を積み、十代の頃にはなかった知識、思考力や前頭葉の力が発達している今、記憶に頼るしかなかったのとは違う英語の身につけ方が可能です。

 

 

『Romancingthe Shadow(影への求愛)』
Connie Zweig, Steve Wolf
(Ballantine Wellspring) 

 

 ユング心理学の視点から、人が魂として癒され、成長していく過程での「影」のテーマについて、家族、恋愛・結婚・パートナーシップ、友情、仕事などについて、様々な臨床ケースを交えて語っています。

 この本は何度も繰り返し読んでいますが、読み直すたびに得るものがあります。

 著者は二人ともユング派分析家で、とくにツワイグは「影」のテーマの専門家として知られ、他に『Meeting the Shadow』(「影」のテーマに関する論文・抜粋集)などの編書があります。

 (訳文には読みやすさのため原文にない改行を入れています)

 

 "In many relationships, money, sex, and power shadows get woven together in a web of unconscious patterns. In dating, for example, they may work together to disguise the deeper shadow issue of dependency. Some people use sex or money to gain power in relationship, so that they can feel safe enough to get their needs met without feeling vulnerable. To be vulnerable is to risk falling into dependency, attachment, and fear of abandonment. They may engage in emotionally detached sex to avoid intimacy yet maintain a connection. Or they may use money as a cover-up for feelings of low self-worth, maintaining a safe, superficial persona and reinforcing a desired image.However, despite our shields, after we begin to receive love, acceptance, and sex from another person, the fear of dependency begins to emerge. We may fear being overpowered ...(omitted). Or we may fear being abandoned...(omitted).

(p. 131, "Sex, Money, and Power Shadows")

 

 

 多くの恋愛では、お金、セックス、力の影の面が、無意識のパターンに織り合わされている。例えば異性との交際では、これらは一緒に働き、より深い影のテーマである依存の問題を隠していることがある。

 ある人々は、セックスやお金を、恋愛関係で力を維持するために使う。それによって、自分が十分安全に感じつつ、無防備に感じることなく、相手に自分のニーズを満たしてもらうことができるようにする。無防備になることを避けようとするのは、依存、愛着、見捨てられるといった状態に陥ることを恐れているからだ。

 このような人々は、感情的に切り離された形でセックスをすることで、親密さを避けながら、つながりを維持しようとするかもしれない。あるいはお金を使って、安全で表面的なペルソナ(自己の仮面)を維持し、望ましい自己イメージを補強しながら、自尊心の低さを覆い隠す。

 しかし、そのような自己を守ろうとする壁に関わらず、ひとりの人から愛を受けとり、受け入れられ、セックスを受けとる時には、依存への恐れが浮上し始める。ある人は依存によって、圧倒されてしまうことを恐れるかもしれない。あるいは見捨てられることを恐れているかもしれない。

 

辞書から得られない表現と単語の解説

relationship
直訳は「関係」だが、現在のアメリカ英語では「長期的な恋愛関係」を指すことが多い。"Are you in a relationship?"と訊かれたら「関係がありますか?」ではなくて「恋人はいる?」という意味。"I ended my relationship"は「関係を終えた」というより「恋人と別れた」。

power  とくに意図的、能動的に何かをコントロールする「力」、「権力」、「影響力」。

date, dating  
日本で理解される「デート」というより、長期的な恋愛関係(relationship)の前段階を指し、関係は軽い。
relationshipは通常、安定した恋愛関係であるが、datingではまだそのような合意が成立しておらず、恋愛の候補探しのために同時期に複数の相手とdateすることは普通。
ここでは日本でイメージされる「デート」と区別するため、「異性との交際」を当てた。この辺の文化面を理解せずにアメリカの恋愛関係の本を読んでいくと、「複数の相手とデート? それって不倫?」みたいな混乱が生じる。

vulnerable  
「傷つきやすい、無防備な」。心理関係の分野で重要なキーワードだが、日本語にするとニュアンスが感じにくい語の一つ。防衛のない、開かれて繊細な状態という意味があり、心理療法や心理療法的要素を含む精神的道程では、防衛を手放すことによって達せられる、望ましい状態と見なされる。

intimacy  
「(非常に深い)親密さ」。なお、文脈によっては性交渉の有無を指し、「intimate relationship」は性的関係のある恋愛関係。

 

"On the outside, dating may look like a pursuit in which, traditionally, the woman runs away just fast enough to get caught. The man pursues her image of beauty, while she chooses him for his power, money, and resources. Each seeks sexual attraction, compatibility, and security on a conscious level. But beneath the boundaries of awareness, another process of dating is taking place.We define this inner process of dating as the shadow's search for shelter in a projection that fits early childhood patterns. By re-creating the past, the shadow tries to help us to feel safe, cared for, and loved. It attempts to achieve these ends by re-creating with a lover the primordial unity we felt in early life with a parent. Then we unconsciously transfer responsibility for our survival from our parents to our partners. And we imagine that our partners will love us the way our parents never did, nurturing our deepest needs and fulfilling our deepest desires.
(p. 124, "Dating: The Shadow's Search for Shelter")

 

 

 外面的には、異性との交際は、伝統的な追跡の営みだ。そこでは、女性はちょうど捕まえられるぎりぎりの早さで走って逃げ、男性は女性の美のイメージを追い求める。そして女性は男性をその権力、お金、財産と才能に基づいて選ぶ。意識的レベルでは互いに性的魅力、相性、安心感を求めている。しかし意識の境界下では、別の異性交際のプロセスが起きている。

 我々はこの異性交際の内的プロセスを、影が、「幼い頃のパターンにぴったりと合う投影の中に住もうとする過程」と定義する。

 影は、過去を再現することで、自分が安全で、面倒を見てもらっており、愛されていると感じようとする。影は、これらのゴールを、愛する人との間に、幼い頃に両親との間に感じた根元的な一体感を再現することで成し遂げようとする。そして人は無意識に、自分が生きるための責任を、両親からパートナーへと転嫁する。そして自分のパートナーが、両親が決してしてくれなかったような形で自分を愛し、もっとも深いニーズの面倒を見、もっとも深い欲求を満たしてくれると想像する。」

 

辞書から得られない表現と単語の解説

pursuit, pursue  
「追跡、追いかける」という意味と「営み、営む」という意味があり、ここではその両方の意味がかけられている。

resource(s)  
「資源、財産、力量、才能」などいろいろな意味があり、複数形ではそのすべてを総合的に指す。ここでは「財産」とだけしても「才能」とだけしても足りないので、「財産と才能」と訳した。

security  
「安心感」と「保証」という意味があり、ここではその両方が入り交じったニュアンスがある。

process  
直訳は「過程」だが、「一つのまとまった形ないし入れ物の中で、ある方向性をもって進行する」というニュアンスがあり、「過程」とだけしてしまうと物足りないので、カタカナ書きで残した。
また、心理療法や心身統合療法の文脈の中では、次のような独特の意味で使われることも多い。「I'm in my process」と言った場合、「(療法の過程で)感情が刺激されて、それを深く感じながら自分に統合しようとする試みの最中(で、感情的に敏感になっている/落ち込んでいる/苦しんでいる)(ので、理解してください/あまり刺激しないでください/そっとしておいてください)」。

shelter  
「避難所、隠れ場所」という意味と「住処(すみか)」という意味があり、ここではその両方が入り交じったニュアンスがある。

lover  
辞書では「恋人」とされ、日本でも「恋人」の訳語としてこれを当てる人が多いが、実際にアメリカで使われる場合には(性的関係のある)「愛人」を指す。公の場で「This is my lover」という紹介の仕方をすることは、まずない。
「He is a great lover」と言った場合には「素晴らしい恋人」ではなくて「セックスのうまい人」。日本の感覚で言う「恋人」に一番近いのは「sweet heart」とか「love」(名詞)あたりで、「This is my love」(これは私の恋人です)というふうに使う。他方でsweet heartは、必ずしも恋人ではなく「とってもやさしくていい人」という褒め言葉としても使ったりする。文脈に注意を払おう! 

 

 

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